「これ みてくれないかい ヌーソさん」 |
||
---|---|---|
「?パンフレット? おお、老人ホームの 入所を考えているんですね」 |
||
「娘たちが、 一人暮らしは 心配だから早く 老人ホームに入れって。 入るのはまだ早いと 思ってるんだよ。 ほかの入居者さんとも わからない。 おら 人見知りなんだ。」 |
||
「よく飲み屋やってますね。」 |
||
「(これ、うちの施設だ) ・・・この施設は やめたほうが(汗)」 |
||
「なんだか安っぽい パンフレットだもんね。 紙は薄っぺらいの使ってるし、 写真も少なくて わかりにくいし。 料金は高いくせにね。 ん?なんだか 苦しそうだねヌーソさん?」 |
「やっぱり老人ホームは入りたくないね」
「旦那さんを もう一度もらうとかも 手段にはありますよね。」 |
||
---|---|---|
「もう旦那はいらないね。 もうやっつけられる のはいいわ。 だいたいこの歳になると 出会いなんてないよ(笑)」 |
||
「老人ホーム に入ると出会いが あるもんなんですよ。 歳の近い方々同士で 入所されますからね。」 |
||
「おぅ。恋ばなだね。 (にやにや)」 |
||
「めずらしく話に くいついてきますね。 恋愛はしたいんですか?」 |
||
「恋愛とまでは いかなくても(にやにや)、 言葉の駆け引きや、 それでドキドキとかは したいもんだよ(にやにや)」 |
||
「私に、その手の 艶っぽい話ができると 思ってるんですか? 恋愛関係のツイートしたら、 「いいね」がなかったどころか、 ほとんどの人が 読まなかったくらい ですからね。二度と 恋愛関係のツイートはしないと 堅く心に誓ったくらいです。 私がわかっているのは、 男女関係のもつれ による刑事事件についてですよ。」 |
||
「なんだか急に 楽しくなくなったね・・・。」 |
「2004年に愛知県の老人ホームで、男性が同じ入居者の女性に絞殺される事件がありました。両者は約1年にわたって交際していたそうですが、周囲から中傷されたため、施設を出てふたりで暮らそうとしたのです。しかし、住まいが見つからなかった。加えて、ホーム内の部屋替えがあり、その女性は自由に部屋の行き来ができなくなって、離れ離れになるなら殺そうと思ったそうです」
「つづいて、2013年には兵庫県姫路市の老人ホームで、男性が同じ入居者女性に馬乗りになって刃物で切りつけているところをスタッフに取り押さえられ、警察に逮捕されました。これも恋愛のもつれが原因だったといわれています。」
「へー。 恋は盲目とはいうけど、 なんで命まで 奪わなきゃ ならないのかね。」 |
||
---|---|---|
「焼け木杭に~なんて 言葉がありますが、 どうも若い人の恋愛よりも 命がけの印象を受けますね」 |
||
「若い人なら若さがあるから、 恋人ができたことで自分は 女だなーと思うことに なるかもしれないけど。 この歳になると、 年齢が全部に ひっかかってくるんだよね。 年齢によるあせりが、 恋人ができたことや 共に過ごす 時間の喜び以上に、 相手に固執して しまうんだろうか?」 |
||
「例に挙げた事件は、 男女それぞれが 加害者だったものを あげましたが、実際は 女性のほうが 固執しやすい傾向が あるそうですよ。 女性は男性より、 恋が終わると二度と 振り向かないなどと いわれているのに、 あとを引くのは女性が 多いというのは 意外ですよね。」 |
||
「特におらたちの世代は 多いのかもしれないね。 お見合いっていうのも 前の世代よりちょうど 減ってきたと 言われ出した時代 だったんだけど・・・。 好きな人と恋愛が できたかというと そうでもないし、 今のようにスマホ なんてないから 出会いも限られて いたからね。 文通とかあったけど、 字の汚い私には ただの苦行に思えたね。」 |
||
「ネットを調べる限りにも、 今の高齢者はちょうど 高度経済成長期を経験し、 仕事一筋に働き、 そして仕事で 認められることイコール、 社会人としてだけでなく、 人間としての評価も 高いとされた 時代だったそうです。 そんな人たちが、 高齢者となり アクティブシニアと 呼ばれる肉体的にも 元気な人たちが 今は多くなったんですよ。」 |
||
「そうすると、 人生のやり残したことを 思い返すと、『恋愛』を もっとしたかったと 思うそうです。」 |
||
「そして恋人ができると、 社会人として人間として 高い評価を受けてきた自分への、 承認欲求 みたいなものが再燃し、 それを恋愛に求めて しまっているのでは ないでしょうか?」 |
「承認欲求っていうのは、 恋愛ではないね。」 |
||
---|---|---|
「若かりし日、 恋への不完全燃焼が あったんだと思いますよ。 でも今向き合う相手に 「恋」以上の 社会的承認も求めて しまったとしたら、その相手に ふられること自体が、 社会的に必要とされない人間 とレッテルをはられるように 思えませんかね。 そこまで 追い込まれたから殺人に 及んだのではないかと 思えてしまうんです。」 |
||
「恋愛はしても、 人に迷惑はかけたくないね。」 |
||
「後妻業なんて 言葉もできたくらい ですからね。 それが財産目当て だったとしても、 人に必要とされることは、 人間にとって とても重要なこと なんでしょうね。」 |
||
「はりえさんだって、 老人ホームに入ったら、 良い相手が見つかり、 二人で老人ホームを 出て暮らそうなんて 言われるかもしれませんよ。」 |
「老人ホームから出たくないね~(笑)」