スカンク部長は電話中のようです。
「・・・社長、私ほど社長に従順な部下はいませんよ(笑) では後ほどご報告に参ります。」
ガチャ(受話器をおろす音)
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「みなさんちょっと 聞いてください。 先日の件ですが、 社長はあのような方針を お決めになり実行に 移されるおつもりです。 ですが、社長が許しても、 私が許しません。 あの件は私が全て 決定します。」 |
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(従順って言って なかったっけ・・・) |
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「ヌーソさん、 別件の事業拡大に ついて話があります。」 |
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「あ、はい・・・」 |
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「先日の事業拡大の件ですが、 わが社は心機一転、 新天地での福祉事業の 拡大を計りたいと 考えています。」 |
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「はあ、なぜまた新天地で?」 |
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「わが社の理念と 社会貢献のためには、 全国でわが社の福祉が 通用することを証明する 必要があるからです。」 |
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(そんなにうちは 福祉に重点を 置いてたかな・・・。) |
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「まず、都道府県別で
多いのはどこなのかしら?」 |
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「それなら、 第21回社会保障審議会 福祉部会用の資料として、 令和元年に作成した 『社会福祉法人制度の現状について』 の中にデータがありましたよ。」 |
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「そのデータから言えば、 一番多いのは大阪府で1,191法人、 2番目に多いのは、 福岡県で1,152法人、 三番目は東京都で 1,069法人の順番となっています。」 |
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「あら、東京が一番ではないのね?」 |
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「そうですね、 人口からいえば、 東京や大阪と考えがちですが、 福祉の中核を成す 社会福祉法人が人口には 比例していないというのは、 意外な結果のように思えます。」 |
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「では、 人口と比較した 社会福祉法人数を 全都道府県別で データを作成して。」 |
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「ヒェッ、 一応そういうデータは ネット上にありまして ・・・。 人口比で比較した場合は このようになります。」 |
最上位3都道府県
都道府県名 人口 法人数 人口÷法人数
青森県 124.9万人 522法人 2,392
長崎県 131.4万人 532法人 2,469
島根県 66.5万人 593法人 2,947
人口に対して、福祉サービスを提供する社会福祉法人数を出すために、『人口÷法人数』の数値を出しています。この数値が小さければ小さいほど社会福祉法人の福祉サービスを受けやすいといえます。
青森県で説明すると、人口が125万人弱あるため、2,400人に対して1法人が関わっているといえます。
もちろん必要な福祉サービスであるかどうかは度外視しています。
次に最下位は
最下位3都道府県
都道府県名 人口 法人数 人口÷法人数
東京都 1,396万人 1,069法人 13,058
神奈川県 905.8万人 793法人 11,422
愛知県 755.3万人 657法人 11,496
となっています。青森県は2,400人に対して1法人でしたが、東京都は13,058人に対して1法人しか関わっていないということになります。
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「なるほどね、 社会福祉法人という 公益性からいえば、 公共の利益に地域格差が あるということは、 福祉サービスの 受けやすさも 違ってくるわね。」 |
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「おっしゃるとおりです。 ただ 社会福祉法人数=福祉サービス の充実とはいえませんがね。」 |
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「その福祉サービス内容にも地域特有の特色があります。
保育事業でいえば、5歳以下の人口を認可保育園潜在利用者数として見た場合、4万人の人口があるのに対して、認可保育園数は469園あり、85人に対して1保育園が割り当てられることができます。
この数字は、保育所の利用定員数が全国で一番増加している横浜市の場合、14万人の人口に対して、 882園ありますから、154人に対して1保育園割り当てられます。ということは青森は横浜の倍、保育園数が存在して福祉サービスを受ける機会があるといえます。」
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「つまり、子育てしやすいってことね」 |
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「そ、それはどうかと・・・。」 「子育てしやすいのであれば 人口増加率も 上がっているべきで・・・。」 |
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「(怒)」 |
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「ヒェ・・・。 こ、これに対して 高齢者事業は、 全国でも介護保険料が 全国3位の高水準を 示しているそうです。 要介護認定者数は 年々増加傾向にあり、 令和7年には8万人に 到達するそうです。」 |
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「8万人と言われても 実感がわかないわ。 高齢者人口は 令和7年でどれくらいに なりそうなの?」 |
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「42万人に到達しそうです。」 | ||
「5歳以下の子どもが
4万人に対して、 10倍の高齢者が存在し、 2倍の要介護認定者数が いるということね。 まさに逆ピラミッド型の 人口比なのね」 |
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「(めずらしく 計算速いな・・・)、 高齢者福祉サービス という意味でも、 施設より居宅サービスの 給付費が高い傾向にあります。 つまり在宅で過ごしている 高齢者が多いようです。 それでいてグループホーム数が 多いともいわれています。 そこからいえば特養や 老健などの大きな施設が 少ないといえますね。」 |
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「福祉サービスは、 単純に需要と供給曲線 ばかり見ずに、 サービス種別にも 着目する必要がありそうね。
わかりました、 当社は青森県に進出します。 青森県で保育園と 運営しましょう。」 |
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「え?え? どういうことですか、 東京など福祉法人数が 少ない箇所へ 進出するべきでは?」 |
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「『虎穴に 入らずんば 虎子を得ず』 ですよ、 ヌーソさん。 難易度の高い ミッションこそ当社の 提供する福祉サービスを アピールする機会に なるからです。」 |
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「社会福祉法人の 公共性は・・・?(涙)」 |