社会福祉法人会計を見れるようになろう入門編いかがだったでしょうか?
社会福祉会計簿記初級や簿記3級などをお持ちの方から見れば、たすきに長し帯に短しの内容だったと思います。
私は今まで、全く会計に触れてこなかった福祉現場上がりの施設長を、何人も見てきました。
そして、その人たちはいきなり会計責任者になり、その内容に追いつけないでいる人を見てきました。
本来であれば会計責任者である以上、簿記の勉強をするべきでしょうが、今後一枚も起票をすることがない人にとって、その簿記の勉強内容はどうにも必要性を欠くのではないでしょうか。
かつ社協の会計研修に行けば、まず必ずバランスシート(貸借対照表)から始まり、だいたい研修から帰ってきた施設長は、「BSが~」「PL出してみてー」と言い出すようになるんです。
いくら御高名な会計士さんや、税理士さんの講釈だったとしても、既存の財務三表を短い研修の中で自分なりに要約してしまうから、このような結果を招くのだろうと思うのです。
となれば、どこから説明を始めるべきか、そしてどこをゴール地点にするべきか考えました。
まず説明するのは「事業活動収支計算書を中心にしよう」でした。
資金収支計算書のほうが見やすいのでは?
事業活動収支計算書より資金収支計算書の方が借入金の動きも見れるし、予算決算の動きを見るべきでは?など思う方が多いかと。
考え方としても、実際のお金の動きですから、資金収支計算書の動きから見る方がわかりやすいとは思うのですが、資金収支計算書から始めると、社会福祉法人会計を混乱させる原因になるようにも思うのです。
一番顕著なのが、固定資産税を支払わない社会福祉法人がなぜ固定資産は減価償却するのか、固定資産税と減価償却費の関係がわからないと、事業活動計算書はなにをしている計算書なのか理解できないと思います。
資金収支計算書の理解で終始してしまわないように、減価償却費がある計算書から見るべきなのではないかと思うんです。
このことですらあえて触れずに入門編は説明をしています。
それでも事業活動収支計算書で説明したのは、事業として成り立っているか成り立っていないかをみる計算書だからです。
全く会計知識がなくても、その事業の一翼を担っている福祉従事者が、自分の事業が成り立っているか成り立っていないかを見てもらいたいと思い、このシリーズを構成しました。
このシリーズの構成
まず(1)会計の基本用語
ご覧いただければわかるように、基本用語なのかどうかも怪しいくらいの内容かと思います。
(1)で説明したかったのは「期」です。
会計には期間があり、その期間の終わりに計算をすることが決算と説明したかったんです。
つづいて(2)保育園編です。
ここではまず、なぜ保育園で説明するのか、から始めています。
未収未払金が発生しやすい高齢者福祉や、障がい者福祉事業では事業活動計算書だけで見るのは不十分だと説明したかったんです。それでも大区分科目を理解できれば、社会福祉法人会計の事業活動計算書は見ることができることを説明した実践編です。
当初は保育・高齢・障がいそれぞれの事業活動計算書を説明していこうかと思ったんですが、大区分だけで全事業を説明しても、ただ収支を見るだけの内容になると思い、あきらめるきっかけにもなりました。
そした、最後の(3)特養を建ててみようです。
保育園編は収入・人件費・事務費・事業費を見る説明でした。
(3)では、これらより下部に記述されている、サービス活動外増減・特別増減を説明したく、無理やり特養を建てて計算書に入れてみています。
記事内でも書いていますが、まさに「肩透かし」の内容になっています。ごめんなさい。
この3部を読んでいただくと、事業活動収支計算書の上から下まで一応見れることになります。
ご自身が勤める福祉施設の財務諸表を見る機会があり、その時目を通すきっかけになってもらえれば幸いです。
事業活動収支計算書をみれるだけがゴールではなかった
本当は入門編で、当期末資金収支差額と前期末残高をみれるようになることをゴールにしたかったんです。
特に内部留保と世間様からパッシングを浴びることになったのは、この前期末残高です。
ここを理解することは福祉従事者にとっても、歴史を知る上で必要なことだと思っています。
よって、入門編は事業活動収支計算書の大区分の数字を見れることで終了し、中級編でこの点を説明したいと思っています。
資金収支計算書の当期末収支差額と事業活動収支計算書の当期末収支差額、貸借対照表の次期繰越活動増減差額が一致しないことを理解するためには、やはり入門編で全部はできませんでした。
最後におまけ
特に(2)(3)の記事は、一つの記事を書くのにのべ10時間くらいかかってます。
とても毎週書いていくにはしんどかったです(笑)
とくに、保育園は120名定員を例にしていますが、施設のデパート化でも説明しているように、
福祉事業の一事業が小型化してきています。その理由をみるには60名定員と比較するため、2つダミーデータを作っていました。
その60名定員は下記のようになります。
委託費収入 102,656,000円
総収入 112,794,000円
人件費率 85,862,000円
事業費 11,328,000円
事務費 7,363,000円
となりました。
120名定員との収入の差は、-2,500万円ですが、
人件費との差額をみると2,300万くらいになり、200万円ほど60名定員のほうが人件費が浮きます。
お客様になる児童の募集数が半分で済み、基準配置の保育士も少なくて済む。そして120名定員より余剰金が200万円ほどでる。
これが、60名定員の保育園が増えている理由になります。