以下を見る前に、社会福祉法人会計を見れるようになろう(2)保育園編をちょっと読んでいただけるとわかりやすくなるかと思います。
特養の事業活動計算書
まず、特養の事業活動計算書を見てみましょうか。
今回もダミーデータを作ってみました。順序が変なんですが、既存施設の会計を見てみます。
80床くらいが最近多いと思いますので、それくらいを想定すると
条件:80床 地方都市
特別養護老人ホーム きゅうりのつる園
介護保険収入・・・・294,826,000円
※入居率は90%とします。
総収入・・・・・・・393,211,000円
人件費・・・・・・・252,393,000円
事業費・・・・・・・ 64,623,000円
事務費・・・・・・・ 48,032,000円
人件費率は61%くらいですから、ごくごく普通の特養だといえそうです。
ここからが本題です
建物は
まず、従来型かユニット型かを決める必要性があります。
一般的に言われている、多床室か個室にするかということです。
設置基準としては、多床室であろうとユニット型であろうと特養は「床面積基準を10.65 平方メートル以上」と定められています。ですが、カーテンにするか、壁を作り個室を作り出すかでは建設コストは大きく違ってきます。
もちろん利用者ニーズが高いのは個室でしょうし、監査指導でもユニット型を勧めてきますよね。
よって今回はユニット型の特養にします。
次に土地は?
特養なので条件としては、
第一種住居専用地域・・・建ぺい率80%で容積率400%での土地
になりますので、逆算すると1,000坪くらいが必要になります。
では購入してみましょう。
土地及び建物支出
※ここからはもろもろの税金などを省いて計算します。
土地代(坪単価200,000円くらいを想定)
1,000坪くらい用意しましょうか
1,000坪×1坪当たり200,000円=2,000,000,000円
計200,000,000円
-----------------------------------------------------
建物代 総床面積2,999平方メートルの建物を、建設費坪40万円で建てたとして、
総床面積2,999坪×1坪400,000円=1,199,600,000円
計1,199,600,000円
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以上の計算から大雑把に計算して、土地建物で
14億円
かかる計算になります。
借り入れ
全額福祉医療機構(wam)から借入できればいいんですが、その地域の福祉ニーズの問題や、土地の抵当などの条件により金額が変わってきます。よって以下は目安だと思ってください。
10億をWAMの福祉貸付制度を利用。
残債と当面の運営費としてプラス1億円借りたとして、銀行から全体で5億円借りたと
します。頭金なしでです。
それぞれの金利は以下のようになったとします。
返済期間はどちらも、30年とします。
wam 10億円 年利0.6%
銀行 5億円 年利2%
(ちょっと高いと思ってますが、固定金利とします)
返済
借り入れ初年度から返済はしないものです。(運営が安定していないため)
ですが、今回はお金の動きをわかりやすくするため、初年度から支払いをしたとします。
元本償還支出(ひと月額)
WAM 2,777,777円
銀行 1,388,888円
となると返済は以下のようになります。(年間)
|
WAM |
銀行 |
||
年間 |
元本償還支出 |
支払利息支出 |
元本償還支出 |
支払利息支出 |
初年度 |
33,333,333円 |
70,900,000円 |
16,666,666円 |
118,166,666円 |
10年目 |
33,333,333円 |
46,900,000円 |
16,666,666円 |
78,166,666円 |
20年目 |
33,333,333円 |
22,900,000円 |
16,666,666円 |
38,166,666円 |
30年目 |
33,333,333円 |
1,300,000円 |
16,666,666円 |
2,166,666円 |
年収入4億円の施設なのに、初年度支払いだけで、合計2億3千万(笑) これはあり得ませんね。本来は土地代を含め0から借りることはあり得ませんし、都道府県や市町村からの補助金もあるのでこんな額にはなりません。
よって、10年目でも運営できない借入だといえます。
でも今回は、事業活動計算書ではどう表示されるかが本題です。
無理やりいれますよー。
事業活動計算書
収入が存在しているので、上記表の10年目を入れます。
特別養護老人ホーム きゅうりのつる園
介護保険収入・・・・294,826,000円
※入居率は90%とします。
総収入・・・・・・・・・・393,211,000円
人件費・・・・・・・・・・252,393,000円
事業費・・・・・・・・・・ 64,623,000円
事務費・・・・・・・・・・ 48,032,000円
サービス活動外増減・・・・・・・ 125,066,666円
その他のサービス活動外増減・・・ 0円
当期末資金収支差額 -96,903,666円
となるんです。
思ったより赤字が少ないですね・・・・?
実はサービス活動外増減に表記されている12,506,666円の内訳は、
WAM46,900,000円と銀行78,166,666円を合算した額なんです。
ポイントとして 元本償還は事業活動計算書には表示されないんです。
つまり、事業活動計算書では借りたお金も返すお金も事業活動とはみなされず、借り入れた金額以上の支払い(支払利息支出)だけを表記するんです。
毎年利息以外でどれくらいお金を返しているかを見るためには、資金収支計算書を見る必要があるということなんです。
この肩透かしのような結果なんですが、お付き合いありがとうございました。
次回の社会福祉法人会計を見れるようになろう(4)はこれまでの総集編を行います。
よろしくお願いします。