ヌーソの皿の上

福祉とpc関係の記事です

施設のデパート化

複合施設とは

表題通りなんですが、最近福祉施設というとデパート化してきているように思わないでしょうか?

ちょっと前までは、似たような事業が複数同一敷地内で運営していることは多かったんです。

例えば、

  ・特養+デイサービス(高齢者福祉)

  ・就労継続支援A型+B型(障害者福祉)

  ・訪問介護+居宅介護支援事業所(高齢者福祉)

  ・有料老人ホーム+デイサービス+訪問介護

    (これは住宅型と呼ばれる有料老人ホームの形です)

      ・・・etc

 ※企業型の保育所であれば、同一敷地内での運営はされていますが、旧式の認可保育園は規制があるので、複数の同一敷地内事業はほとんど存在しないはずです。ご興味があれば

nu-so.hatenablog.com

もご覧ください。

 

それが最近、

  ・有料老人ホーム+就労継続支援事業所(障害福祉

  ・特養(高齢者福祉)+グループホーム(障害者福祉)

  ・グループホーム(障害者福祉)+デイサービス(高齢者福祉)

  ・グループホーム(障害者福祉)+グループホーム(高齢者福祉)

   ・・・etc 種類が多すぎて全て紹介できません

 

のような、同じ「福祉」ではありながらも系統が違う事業を行う施設が多くなったと思うんです。

 

福祉と言いながらも

 

職員の定期昇給に応えることにより優秀な人材が育ち、人件費率が上がればその対処をしなくてはなりません。よってどんな事業でもいえることは、事業の拡大維持が必然なんです。

福祉業界だけに限ることではありませんが、事業の拡大を行うときに一番問題になるのは固定資産、運用資産ではないでしょうか?さらに福祉業界の特異性として、福祉業界は施設という「箱」を作る、作りたがるところがあるような気がします。訪問や通所事業であればまだテナントとして行うところはあるにしても、それ以外はほぼ自前で土地・建物を持つことが多いんです。その理由として、「貸借対照表が伸びるからだ」と私は上司に習いました。ほんとに貸借のためだけですか?と怪しんでしまいますが・・。

市場の見込みから言えば、利用者となる高齢者はずっと増加傾向にあり、保育園・保育所であればまだまだ補助金が出ます。ですが、アベノミクス後はどうも規模が小さい、定員数の少ない施設が多いように思わないでしょうか?これが、福祉業界における施設という「箱」のこだわりにつながっています。

 

福祉施設の収益の出し方

 

普通の飲食店であれば、「回転率」という考え方がオーソドックスですよね。昼食でにぎわう店なら、コアタイム11:30~13:30位として、「店の中の座席数が2~3回転するな」などと計算することが「回転率」です(甘すぎの計算です)。これが、福祉施設だと回転率というのは存在しません。どの福祉事業でも、契約書をかわしますので、「登録者」が利用する仕組みになっています。例えばデイサービスを運営している場合、いくら利用できる枠があったり、欠席者が多いからと言って、「登録者」に今日利用されませんか?という営業はできないんです。ケアマネージャーによるケアプランに盛り込まれているか、緊急性があるかなどの理由がないと、当日急遽の利用はできません。

 

デイサービスで例えたので、このままデイサービスで説明しますと、一日で利用できる利用者数が決まっています。いろいろな設備も必要ですが、おおよそ居住スペースの床面積に利用定員1人あたり3㎡以上であることが、設備基準の中に明記されています。ということは、施設が大きければ大きいほど、たくさんの利用者さんを呼べるということになりますよね?となれば、なぜ大きな施設ではなく、小さな施設が増えたのでしょうか?

 

福祉施設の報酬は、高齢者福祉であれば介護保険、保育園は委託費といったように、各利用者さんからの利用料以外に支払われる「補助金」(ちょっと語弊がありますね、いい表現方法があれば教えてください)、医療でいう医療保険のようなものがあります。しかし、これらの報酬を得るためには、先ほど述べた設備基準や、職員の配置基準が存在します。詳細は省きますが、大きな施設でたくさんの利用者さんを入れるとなれば、それだけ資格の持った職員を、基準通り配置する必要性があり、利用状況に合わせて人件費を増減することはできないんです。人件費が上がった分だけ利用者さんが来てくれればいいですが、実際はそうもいきません。

よくいう風呂敷の広げすぎが一番この業界では怖いんです。そうならないように利用率が80%から100%で運営する計算で施設を建てるんです。つまり、利用定員という「分母」が重要なんです。

50床と100床、それぞれ介護施設を運営した場合、ひと月の空床は一割(高すぎです)だったとしたら、50床であれば5床分新規利用者を集めなくてはなりませんが、100床であれば10床も新規利用者を集める必要性が出てきます。まだまだ右肩上がりの高齢者事業でも、さすがに毎月10人もの待機者を抱える施設は少なく、また新規登録者にはアセスメントも必要になるため、新規利用者を増やすというのは絶対必要でありながらも、現場には負荷が大きいという事実もあるんです。

 

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どお?

 

となれば、小さな事業所を複数建てて収益をあげることのほうが、大きな事業所を建てるよりも、資金回収が手堅いということになるんです。

そのため福祉施設がデパート化してきているんです。